公開: 2024年3月27日
更新: 2024年7月31日
1945年以降の日本社会では、義務教育の課程を修了した人々は、高等教育に進学するか、社会に出て働くかのどちらかを選択します。高等教育に進学する人々も、高等教育を終えた後に、そのほとんどが、社会に出て働きます。いずれの場合も、社会で働くためには、企業等の就職試験を受け、内定をもらい、次の年の4月に就職します。このとき、中学校の卒業者、高等学校の卒業者、大学卒業者は、それぞれ一括して新入社員として企業等の所属となり、新入社員教育を受け、社内教育を受けて、その後、それぞれの働く現場に配属されることになります。
給与は、中学校卒業、高校卒業、大学卒業によって、違っていますが、それぞれの立場の中では、みな、ほぼ同一の賃金となります。さらに、入社後、一定の年数が経過するまでは、個人の能力や適正による賃金の差はありません。その後、一定の年数が過ぎると、新入社員の立場から、その上の階層に昇進する人々が出て、少しずつ賃金に差が出るようになりますが、賃金の差は大きくありません。つまり、同じ年に入社した人々の賃金は、それほど大きくは変わりません。このような制度を、一括採用、年功賃金と呼んでいます。これは、日本社会では、従業員は、最初に入社した企業で一生働くことが前提になっているからです。つまり、従事する仕事は違っても、同じ企業に働き続ける(終身雇用)ことが前提となっています。
このような雇用制度は、日本社会に特有なもので、他国とは違っています。米国などでは、企業が新入社員を採用するのは、特定の分野の専門家が必要になった時で、大学や他の教育機関で、専門的な訓練を受けた人材を指定して、その資格に適合した人々から、適切な人を選択して、採用します。そのため、賃金は、専門分野と経験によって違ってきます。つまり、同じ仕事でも、経験の多い少ないで、変わってくるのです。有能な人材には、高い賃金を支払い、そうでない人たちには、賃金は低くなります。日本では、最終学歴によって、賃金は変化しますが、最終学歴が同じであれば、入社した年次で、賃金が変わるだけです。
このため、日本社会では、米国社会の場合などとは大いに異なり、社員の年齢と賃金の高さに、強い相関関係が生まれます。このことは、企業に入社した後、他の企業に籍を変える(転職する)ことは、従業員の目から見ると損失になるリスク(危険)があります。このことが、日本社会における雇用の流動性を低くしていると考えられています。そして、そのことが、日本社会を活性化できない主たる原因になっていると考えられています。